輸出や片道配送で「木製パレットを回収できない」「荷受け先がパレットの処理に困っている」という場合、候補になるのがダンボールパレットです。軽量で、材質や回収ルートによっては受取先で古紙として処理しやすい一方、フォークリフトでの扱い方や湿気には注意が必要です。
結論からいえば、ダンボールパレットは「紙だから弱い」とも「耐荷重5tだから何でも運べる」とも判断できません。荷物の置き方、床置き・フォーク持上げの違い、保管環境、受取側の廃棄ルートまで確認して選ぶ資材です。この記事ではメーカーの公表試験値を読み解き、木製・樹脂製との違い、価格、輸出時の注意点、実際の導入判断まで整理します。
ダンボールパレットとは?構造と主な用途
ダンボールパレットは、段ボールや強化段ボール、紙管などの紙系部材で作られた荷役用の台です。上面のデッキ(天板)と、荷重を受ける脚・桁などで構成されますが、構造はメーカーによって異なります。紙管脚型、強化段ボールの桁を使う型、厚い積層部材を使う型などがあり、外観だけで耐荷重を判断できません。
木製・樹脂製と同じく、パレットに載せた貨物をフォークリフト等で荷役できる設計があります。特に、海外向けの片道輸送、回収ルートのない納品、パレット自重の軽量化を検討する場面と相性があります。一方、繰り返し長期間使う用途や、頻繁な水濡れ・衝突がある場所では適否を慎重に判断します。
ダンボールパレットと「パレット用の段ボールシート」は別
通販には「パレット用ダンボール」「パレットシート」といった商品もありますが、パレットの上に敷く保護シートと、脚・桁を持つ荷役用パレット本体は別の商品です。商品検索や見積もりでは、寸法だけでなくフォークで扱う本体か、敷き紙かを確認してください。
ダンボールパレットの種類と荷重の受け方
| 構造の例 | 特徴 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 強化段ボールの桁型 | 天板と桁材で支持する | 桁の位置、差込方向、偏荷重 |
| 紙管・円筒脚型 | 紙管状の支持部で荷重を伝える | 脚位置、接着部、点荷重 |
| 積層・特殊成形型 | 材料の積層や構造で強度を調整 | 許容荷重と試験方法、湿度条件 |
同じ1100×1100mmでも、荷物の足が四隅の支持部に載るか、天板中央だけに載るかで負荷が変わります。パレットの荷重を受ける位置と製品の接地位置が合っているかが重要です。

耐荷重は何kg?メーカー公表値の読み方
紙製パレットの公表耐荷重には大きな幅があります。例えばナビエース「ナビパレット」は平面耐荷重約1tを掲げ、大幸紙工「TSパレット202」は全面圧縮試験の平均最大荷重5,126.2kgfを公開しています。
しかし、「約1t」と「5,126kgf」を横並びにして、どちらの製品が何倍強いか判断してはいけません。試験の荷重のかけ方、最大荷重か実用許容値か、フォークで持ち上げた状態かなどが異なるからです。
TSパレット202の試験結果を例に確認
大幸紙工が公開しているTSパレット202(1100×1100×135mm、製品重量約6.5kg)の第三者機関の試験では、23℃・相対湿度50%で24時間前処理した後、条件の異なる圧縮・曲げ試験が行われています。
| 公開された試験 | 平均最大荷重 | 示している内容 |
|---|---|---|
| 全面圧縮試験 | 5,126.2kgf | 全面から荷重を受ける条件の最大値 |
| デッキボード2点荷重 | 958.14kgf | 天板の特定位置へ荷重をかける条件 |
| フォーク曲げ荷重 | 477.86kgf | 持上げ状態を想定した曲げ試験条件 |
出典:大幸紙工「強度検査」。単位のkgfは荷重の単位であり、表の値は試験時の平均最大荷重です。いずれも「何kgの荷物を安全に運べるか」という統一された推奨積載質量ではありません。
全面圧縮の最大値が大きくても、天板の一部へ荷重が集中したり、フォークで支持位置が変わったりすると別の強度が問題になります。フォーク曲げ試験の477.86kgfを、そのまま「積載上限477kg」と読み替えるのも誤りです。

静荷重・動荷重・点荷重を分ける
- 静荷重:床に置いて保管するなど、支持状態が比較的安定しているときの荷重。
- 動荷重:フォークリフトで持ち上げ、運搬する際などの条件で評価する荷重。
- 点荷重・偏荷重:機械の細い脚や、荷物の片側へ重量が集中する条件。
ナビエースの耐荷重解説も、質量だけでなく底面形状、重心、点荷重、フォークでの支持状態、保管期間などで適否が変わると明記しています。採用前にはメーカーへ「この荷姿をこの方法で搬送できるか」を確認する必要があります。
木製・樹脂製との違いを比較する
| 項目 | ダンボール製 | 木製 | 樹脂製 |
|---|---|---|---|
| 自重 | 軽量設計が多い | 比較的重いものが多い | 製品仕様による |
| 水・湿気 | 原則として要注意 | 吸湿・腐朽に注意 | 一般に比較的強い |
| 繰り返し使用 | 用途・仕様次第。片道向きが多い | 回収・修理できる例が多い | 繰り返し運用に適する製品が多い |
| 強度 | 構造と荷重条件による | 構造・樹種・状態による | 構造・材質による |
| 受取側の処理 | 古紙回収に出せれば簡便 | 回収・再利用・処分先が必要 | 回収・再利用・処分先が必要 |
| ISPM 15 | 紙のみなら木材処理の対象外 | 無垢材の条件を確認 | 木材処理の対象外 |
あくまで材質ごとの一般的傾向です。ダンボールパレットでも補強材・耐水加工・積層構造が異なれば取扱い条件が変わります。木製と樹脂製にも軽量型・重量型があり、材料だけで価格や安全性を順位付けできません。
実務上の弱点|引きずりと突き押しに注意
紙製パレットを導入するとき、カタログの「耐荷重」だけでは見落としがちな問題があります。木製パレットと同じ感覚で床を引きずったり、フォークリフトの爪先で突いて位置を調整したりすると、脚・桁・接着部・天板を傷めるおそれがあることです。
実際の荷役では、コンテナ奥やトラック荷台上で少し位置を変えたい場面があります。しかし、接触箇所へ力が集中するため、パレットを「突いて動かす」前提の運用には適さない製品が多く、導入前に荷役手順を見直す必要があります。
ただし、すべてのダンボールパレットが引きずりに耐えない、と一律に断定するのも不正確です。ナビエースは特定の強化段ボールパレットについて引きずり耐性を公表しています(メーカーFAQ)。引きずりや横押しが許されるかは、個別の仕様・保証条件をメーカーへ確認してください。また、木製パレットでも無理な突き押しは損傷・労災の原因になり得ます。
荷役担当者へ共有したい事項
- フォークを差し込める方向・奥行き・支持位置
- 爪先での突き押しや荷台上の横滑りが許容されるか
- パレット底面を引きずってよい仕様か
- 荷役途中に荷姿を傾ける可能性はないか
- 荷下ろし側にも同じ注意事項が伝わっているか

受け取り側が処理しやすいのもメリット
ダンボールパレットの利点は発送する側の軽量化だけではありません。受け取り側が使い終わったパレットを処理しやすい可能性があることも、ワンウェイ輸送では重要です。
木製パレットは、相手先に回収契約や再利用先がなければ、まとまった数量を保管したり、廃棄業者を手配したりする必要が出てきます。一方、紙製パレットは、材質・汚れ・加工仕様が古紙回収の条件に合っていれば、段ボール箱と同じ古紙回収ルートへ出せる場合があります。
ただし、「ダンボールパレットは必ず通常の古紙に出せる」とは限りません。耐水樹脂加工、異素材の脚、金属部品、接着剤、油汚れなどにより、分別や事前確認が必要な場合があります。相手先の回収事業者・自治体・事業系廃棄物の契約条件を確認してください。
採用を判断するときは、発送側の「買いやすい・運びやすい」と荷受側の「置き場所を取らない・処理しやすい」の両面で総費用を比較するのが実務的です。荷受人の負担が減れば、片道輸送でのパレット受入れが円滑になる場合があります。
水濡れ・湿気・海上コンテナでの注意点
紙製部材は水濡れや高湿度によって強度が変わることがあります。耐水加工をした製品でも、屋外長期保管や水たまりへの接触まで保証するとは限りません。輸送経路・保管期間・倉庫環境の確認が必要です。
| 環境 | 主な懸念 | 導入前に確認 |
|---|---|---|
| 雨天の屋外荷役 | 天板・脚への直接水濡れ | 雨よけ動線と耐水仕様 |
| 湿度の高い倉庫 | 吸湿や長期圧縮による変形 | 保管期間・湿度試験 |
| 海上コンテナ | 結露・温度変化・長時間荷重 | 防湿対策と実輸送条件 |
| 濡れた床面 | 脚部の局所的劣化 | 床の状態・仮置き方法 |
海上輸送では、紙製パレットの選定と、貨物そのものの防湿包装は別の対策です。精密機器や金属製品には、防錆・乾燥剤・バリア包装などを貨物の条件に応じて検討してください。
価格とコスト|単価だけでなく回収費を比較
ダンボールパレットには少量販売の規格品と、寸法・荷重・脚部構造を設計する特注品があります。発注数量、サイズ、支持構造、送料、納品先などで価格が変わるため、今回の記事では条件が統一されない商品価格を一般相場として断定しません。
| コスト | 主な確認事項 |
|---|---|
| 購入費 | 単価・最小ロット・特注設計費・送料 |
| 輸送費 | パレット自重、積載効率、運賃算定方法 |
| 荷役費 | フォークリフト作業、位置調整、追加の取扱教育 |
| 保管費 | 雨よけ、床面保護、空パレットの保管 |
| 回収・処分費 | 返送費、荷受先の古紙回収可否、廃棄費 |
例えば木製パレットより資材単価が高くても、回収不要で荷受先の処理が容易なら総費用で有利になる場合があります。逆に、繰り返し使用する物流では木製・樹脂製の方が合理的なケースもあります。
輸送費を比較する際は、パレットの材質に加えて箱の配置と積載個数も確認します。安全条件を含む試算の進め方は、パレット積載効率の改善方法で確認できます。
輸出で使うときはISPM 15を確認
木製パレットの輸出で問題になるのがISPM 15の木材こん包材規制です。植物防疫所の輸出用木材こん包材消毒実施要領は、対象となる木材こん包材から紙製品を除いています。つまり、紙系材料のみで作られたダンボールパレットは、通常、ISPM 15の木材消毒・処理表示の対象外です。
ただし、無垢材の脚・補強材が付いた複合構造の場合は、その木材部分も含めて輸出先の要求を確認してください。紙製であっても、輸送会社の受託条件、荷受人のパレット指定、現地での処分条件まで免除されるわけではありません。
木材規制の確認先は植物防疫所「木材こん包材の輸出入」。なお、ISPM 15への適合はパレットの強度や貨物の固定を保証する制度ではありません。
導入前チェックリスト|メーカーと荷受先に確認
- 荷物の状態:総質量、底面寸法、脚やキャスターの接地位置、重心。
- 耐荷重の条件:静荷重・動荷重・集中荷重と、試験方法や許容値。
- 荷役方法:フォークの差込方向、フォーク長、突き押しや引きずりの可否。
- 輸送経路:トラック・コンテナ・混載・積替え、結露リスク。
- 保管環境:屋内外、床濡れ、温湿度、保管期間。
- 費用:単価、数量、送料、追加保護、作業コスト。
- 荷受人への確認:紙製パレットを受け入れられるか、使用後の古紙回収・分別ルートがあるか。
必要ならメーカーへサンプル試験を相談し、実際の積載物と荷役条件での性能を確認します。単一の最大圧縮数値だけで導入を決めるより、事故と廃棄負担の両方を減らせます。
ダンボールパレットでよくある質問
段ボールと一緒に捨てられますか?
古紙回収先が受け入れる仕様であれば可能な場合があります。防水加工、異素材、汚れなどがある場合は回収先へ確認してください。
木製パレットより安いですか?
一律には言えません。購入価格に輸送・回収・受取側の処分費を加えた総費用で比較してください。
耐水タイプなら屋外でも使えますか?
耐水加工の範囲は製品によって異なります。長期の雨ざらしや濡れた床面での保管まで対応するとは限らず、メーカー仕様の確認が必要です。
まとめ|輸送側の扱い方と受取側の処理まで見る
ダンボールパレットは、軽量で片道輸送に使いやすく、条件が合えば荷受先で古紙として処理しやすい資材です。一方、荷重のかけ方で強度が変わり、引きずりや爪先での突き押し、水濡れへの配慮が必要です。
選定時は①荷姿ごとの耐荷重、②荷役手順、③輸送・保管環境、④輸出先の規制、⑤荷受人の処分ルートを確認しましょう。
荷物の積み付けやストレッチフィルムの巻き方は、こちらで詳しく解説します。
参考資料・確認先



