パレットに段ボールを載せてストレッチフィルムで巻いたのに、運搬中に箱がずれたり、下段の箱が潰れたりすることがあります。原因は「巻き方」だけでなく、積み付けパターン、重量配分、箱の支持状態、パレットとの固定方法にあるかもしれません。
パレット梱包の基本は、①荷物を安定して積む、②箱同士とパレットをまとめる、③車両・コンテナ内では荷姿全体を適切に固定する、という三つの段階を区別すること。この記事では、箱の積み方4種類、梱包7手順、ストレッチフィルムやバンドの使い分け、荷崩れを起こしやすいNG例を、研究・メーカー・公的資料を基に説明します。
パレット梱包とは?基本の役割と必要な資材
パレット梱包は、木製・樹脂製・紙製などのパレット上に貨物を積み、輸送や荷役に適したまとまりにする方法です。複数の箱をフォークリフトで扱える一方、パレットに載っていること自体は荷崩れ防止を意味しません。
主な資材はパレット、ストレッチフィルム、必要に応じたバンド、角当て、中間シート、滑り止め材です。荷物が精密機器や重量物なら、これに加えて個別の固定方法や梱包仕様を検討します。大型の単体機械を支持台に直接固定する方法は、通常の段ボール箱のパレット積みとは判断基準が異なります。
パレットはサイズより先に使用条件を確認
パレットのサイズが箱の底面に合っていても、積載質量、傷み・割れ、フォーク差込方向、輸送先の扱い方が適切でなければ使えません。最大積載質量は製品固有の仕様であり、動荷重・静荷重・棚載せなどの条件を区別して確認します。「1t用」といった呼び名だけで全条件の安全性を判断しないでください。
パレット梱包の積み方4種類と使い分け
代表的な積み付け方には、ブロック積み(棒積み)、レンガ積み、交互列積み、ピンホイール積みがあります。どの方法が適切かは箱の寸法、圧縮強度、荷姿の高さ、積載設備によって変わります。
| 積み方 | 特徴 | 注意する点 |
|---|---|---|
| ブロック積み(棒積み) | 各段の箱の向き・位置をそろえる | 箱の角を上下でそろえやすいが、段間の横ずれに注意 |
| レンガ積み | 箱をずらしながら組み合わせる | 横ずれを抑えやすい場合がある一方、下段の支持条件を確認 |
| 交互列積み | 列・段の向きを変える | 段間のかみ合わせと箱の支持位置を両立させる |
| ピンホイール積み | 箱を風車状に配置する | 中央の空間や箱寸法による強度・積載効率の変化に注意 |
日本包装学会誌(2022年)の「パレット積付け段ボール箱の圧縮強度解析」では、箱の角が下段のどの位置で支えられるかに着目し、複数の積み付けパターンについて箱の圧縮強度を解析しています。この研究は、積み方によって段ボール箱の圧縮強度が変わり得ることを示す根拠です。ただし、特定の配置が全貨物で最も安全だと実証したものではなく、横ずれのしにくさを圧縮強度だけで決めることもできません。
ブロック積みは上下の角を合わせやすい一方、横ずれ対策を別に考える必要があります。レンガ積みや交互列積みは互い違いにすることで安定する場合がありますが、下段の箱の面へ荷重がかかり、圧縮性能に不利になる場合もあります。箱の圧縮強度と荷崩れしにくさを同時に確認しましょう。
箱の配置や外寸を見直す場合は、1段の個数だけでなく段数・重量・強度まで比較します。具体的な計算例は、パレット積載効率の改善方法で確認できます。

パレット梱包の基本7手順と出荷前点検
- 荷物とパレットを確認する:箱の寸法・総重量・内容品の重さ、パレットの耐荷重・傷み、フォーク差込方向を確認します。
- 積み方と段数を決める:下段へかかる荷重、箱の圧縮強度、重心の高さ、出荷先の荷姿制限を考慮します。
- 箱を安定して積み付ける:重い箱を適切に下段へ置き、著しい片寄りやパレットからのはみ出しを避けます。箱の角の支持状態も確認します。
- 必要な保護・補助材を入れる:角当て・中間シート・滑り止めなどを貨物に応じて設置し、滑りや箱潰れを防ぎます。
- フィルム・バンドで荷姿をまとめる:使用資材の特性に従い、箱同士だけでなく箱とパレットの一体化にも注意します。
- 固定状態を点検する:フィルムの破れ・緩み、バンドの偏った締め付け、箱の変形、荷物の傾きを確認します。
- 荷役・車両内での保持方法を確認する:荷姿全体の重量・外寸・重心を共有し、車両やコンテナ内での適切な固縛を別途確認します。

ストレッチフィルムの巻き方とよくある誤解
ストレッチフィルムは箱をまとめ、荷ずれを抑える資材です。積水樹脂もパレット積み商品の荷崩れ防止用資材として紹介しています。ただし、荷物の重量・高さ・フィルム仕様によって必要な保持力が変わるため、同じ巻き方がすべての貨物に適用できるわけではありません。
熱でフィルムを縮めるシュリンク梱包は、引き伸ばして巻くストレッチフィルムとは別の方法です。商品単位の密着包装などの用途と違いは、シュリンク梱包の仕組みと使い分けを確認してください。
手巻きの基本的な流れ
- 積み荷の安定性を確認し、巻き始めが外れないようフィルムを保持する。
- 下部で荷物とパレットが一体となるように巻き付ける。パレットの角やフォーク差込部に引っ掛かって破れないことも確認する。
- 適切な張力で重なりを設けながら、下から上へ巻き上げる。
- 荷姿に応じて上部・下部を補強し、巻き終わりをフィルムに密着させる。
- 箱が変形していないか、フィルムが浮いていないか、ぐらつきがないか確認する。
サンワウェブの巻き方解説は、少なくともフィルム幅の25%を重ねる例を示しています。これは一つの作業例で、25%重ねたら安全という規格上の保証ではありません。実際にはフィルムの種類、巻付け張力、巻き数、箱の強度、輸送経路も含めて検討します。アスクルの解説でも荷物とパレットの一体化が重要とされています。
手巻きでの張力・重ね幅・巻き終わりを具体的に確認したい場合は、ストレッチフィルムの使い方|ミニ・手巻き・パレットの巻き方と失敗対策を参考にしてください。荷姿ごとの保持力と出荷先の指定を優先します。
フィルムは何周巻けばいい?
安全な巻き数を一律に示すことはできません。軽い均一な箱と、重く背の高い荷姿とでは必要な保持力が違います。メーカーの推奨条件、出荷先の荷姿指定、社内の実績や試験結果を基に作業標準を定めるのが適切です。フィルムを強く巻きすぎて箱が潰れる場合もあるため、巻数を増やすだけで解決しようとしないでください。
積み付けパターン・段数・使用資材・固定条件を繰り返し再現するには、採用した荷姿を写真や図とともに記録します。項目の整理と改訂管理は「梱包仕様書の作り方」が参考になります。
荷崩れを防ぐ資材の使い分け
| 資材 | 役割 | 注意点 |
|---|---|---|
| ストレッチフィルム | 箱同士をまとめる・荷ずれを抑える | 過度な張力・箱潰れ |
| PP・PETバンド | 箱や荷姿を結束する | 製品に応じた強度選定、角当て、切断時の反発 |
| 角当て | バンド・フィルムによる角の圧迫を緩和 | それ自体に固定力があるわけではない |
| 中間シート | 箱の支持・荷重分散を補助する場合がある | 滑りやすさが変化する場合がある |
| 滑り止め材 | 接触面の摩擦を高める | 単独で十分な固縛になるとは限らない |
| ラッシング材 | 車両・コンテナ内で荷姿全体を拘束 | 固縛点や許容強度を確認する |
荷崩れを招くNG例と原因別の対策
| NG例 | 起こる問題 | 見直すこと |
|---|---|---|
| 箱がパレット外へはみ出す | 箱の端部が十分に支持されず、潰れ・傾きにつながる | パレット寸法・箱の配置 |
| 重い箱が上に集中する | 重心が上がり、下段への負荷が増える | 重量の配分、段数、強度 |
| 箱の角が十分に支持されない | 圧縮強度の低下につながる場合がある | 積み付けパターン・箱の強度 |
| 箱同士だけを巻く | 箱全体がパレット上でずれる可能性 | パレットとの一体化 |
| フィルムを強く締めすぎる | 箱の変形・破損 | 張力・フィルム・補助材 |
| パレットごと車内で動く | 荷姿全体の滑り・転倒 | 車両内の固縛・積載条件 |
前掲の日本包装学会誌の研究では、パレットのはみ出し(オーバーハング)による箱の強度低下にも言及しています。パレット上で箱を見栄えよくそろえるだけではなく、荷重を受ける箱の角・辺・底面がどのように支持されるかを確認しましょう。

荷物の固定と車両内の固縛は別作業
パレット梱包では、箱同士・箱とパレットを一体化する作業と、パレットごとトラック荷台やコンテナ内で固定する作業を混同しないことが重要です。フィルムで荷物を巻いていても、パレット全体が荷台で滑る可能性は残ります。
IMO・ILO・UNECE共同のCTU Codeは、コンテナ等に貨物を積み付ける際の荷重分布・固縛などの国際実務指針です。現場では輸送会社や荷主の安全基準・車両条件と照合してください。CTU Codeをすべての国内運送へ一律に義務付ける法律とは扱いません。

フォークリフト荷役と出荷前の安全点検
荷役では、パレットの劣化・割れ、積載荷重、フォークの差込方向と高さ、荷姿の傾きなどを確認します。高積みで前方視界が妨げられる場合や、偏荷重がある場合は、運転者の判断だけに頼らず、作業手順を見直してください。荷崩れのおそれがある荷物の近くや荷の下に人が入らないよう、作業区域の管理も必要です。
厚生労働省の荷崩れ防止等の資料も参考に、作業者だけでなく荷主・倉庫・運送会社が荷姿条件を共有することが大切です。
輸出パレットは材質とISPM15を確認
輸出では、パレット本体の材質と輸出先国・地域の木材こん包材規制を確認します。植物防疫所の案内によると、輸出先がISPM 15に基づく措置を要求する場合、対象となる無垢材の木製パレットには所定の処理・表示が必要です。
| 材質 | 輸出時の主な確認 |
|---|---|
| 無垢材の木製 | 仕向国の要求、正規の処理・表示 |
| 規定の加工木材のみ | 適用除外条件を確認 |
| 樹脂製 | 木材規制とは別に材質・輸送条件を確認 |
| 段ボール製 | 植物検疫だけでなく、強度・湿気・荷役条件を確認 |
ダンボールパレットの構造・耐荷重・費用比較は別記事で扱うため、ここでは資材の選定方法を簡潔にとどめます。なお、木材こん包材のISPM 15適合は、荷崩れ防止や強度の保証ではありません。
パレット梱包でよくある質問
ストレッチフィルムだけで荷崩れを防げますか?
荷姿によります。軽量で形状がそろった箱なら適切に使用できる場合がありますが、重量物・高い荷姿・滑りやすい貨物では追加の固定方法が必要になることがあります。
ブロック積みとレンガ積みはどちらが安全?
一律には決められません。ブロック積みは箱の角を上下にそろえやすく、レンガ積みなどは横ずれを抑えやすい場合がありますが、箱の強度や輸送条件によって適否が変わります。
まとめ|積み付けと固定を一つの工程として考える
パレット梱包は、箱を載せてフィルムを巻くだけでは完成しません。箱の圧縮強度、積み付けパターン、パレットの支持条件、荷姿の固定、輸送中の固縛まで確認して初めて、安全性を評価できます。
まずは①パレットと箱の条件、②積み方と重心、③フィルム・バンド等の固定、④荷役・車両内の保持、⑤輸出時の材質・規制を順に確認しましょう。重量物や特殊な貨物では、輸送会社・専門梱包業者の条件を優先してください。
重量物・機械の梱包方法も確認しよう
パレットに荷物を積む方法だけでなく、機械や重量物を台座へ直接固定する「スキッド梱包」や、製品の周囲を枠で保護する「木枠梱包」もあります。
荷物の重量・形状・輸送中に必要な保護によって、適した梱包方式は異なります。
それぞれの構造や固定方法、輸出時の注意点は、以下の記事で解説しています。
参考資料・確認先




